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執筆者の写真Kazuhiro Yorimitsu

思い出の場所、行方不明



 地震発生からまもなく2週間という1月13日、能登の被災地は真っ白な雪に覆われていました。石川県珠洲市大谷町の行方不明者捜索現場は、吹雪の中、警察と自衛隊の方々が必死の捜索活動を続けてくださっていました。

 この場所は、実家からわずか数メートルです。行方不明になっているのは田保一夫さん(67歳)。子供の頃から、私のことをかわいがってくれた人です。秋祭りなどで、帰省した際は「帰ってきたか。おかえり」と声をかけてくれました。いつも、にこにこと笑っていました。

 裏山が崩れ、大量の土砂が自宅を覆いました。泥の中に、いくつかの工作機械が埋まっていました。一夫さんは建具職人で、工房は私たちが子供の頃の遊び場でした。機械を見つめていると、子供の頃の思い出がいくつも浮かんできました。木っ端を集めて船の模型を作ったこと、削ったばかりの木の香り、冬の薪ストーブの火がはぜる音…その思い出の中に、にこにこと笑う一夫さんの姿があります。

 一夫さん、早く出てきて…みんな待っとるよ。でも、こんどは俺が「おかえり」って言わんなんげんね…

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